7.季節外れの豪雨

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 現場は高知市の北西部、鏡川の上流の地区で、その支流の谷川沿いの民家2棟に土石流が流れ込み家ごとひしゃげていた。住んでいる70歳代の女性が行方不明になっている状況で、本部長はその情報を聞いてすぐにISDを使う判断を下したらしい。  土石流が直撃した2軒のうち、片方は幸い空き家だったらしく全壊していたが、女性の住んでいた家は平屋で土砂が家の中に入り込み、屋根は重みで落ちていた。  女性の生存確認は取れていないが、雨の続く中で救助活動が行われており、また、土石流の危険も残っているため救助隊もうかつに近づけないでいた。  今のところ現場でできることは、メイン道路から重機を下すための道路を人の手で作ることくらいで、肝心の倒壊した家屋には近づけない。  現場近くの道路には、既に駆けつけた消防関係者の車がたくさんいて、我々の車は数百メートル先の空き地に置いて歩くことになった。  クロとシロのケージはクラウド一人が両肩に担いで行ったし、他の荷物も皆で持った。  消防の現地本部となっているテントに着き、詳細なことを確認すると、発生から6時間が経過して、倒れた家屋には、家の隙間に入っていれば、十分生存の可能性もあることがわかった。  オレはクロにその情報を伝えてからクラウドにシロのケージだけを持ってもらい、壊れた家に近づいた。 「ストップ!」 突然シロから指令が来た。 「クラウド止まれ!」 とオレは言って、クロの次の言葉を待った。  「シロが言うには、家の真ん中付近で倒れているおばあさんがいると言ってる。生きてるぞ!」
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