33人が本棚に入れています
本棚に追加
土曜日はすがすがしい晴天だった。梨香子は七時に起きた。コーヒーを淹れて飲む。家は十二時に出る予定だ。時間はたっぷりある。洗濯をして掃除をした。働いていると土、日は家のことをやるので忙しくなる。九時開店のスーパーへ行って冷凍食品や調味料も買っておいた。スーパーの帰りに横断歩道を渡っていたら右折する車にぶつかりそうになった。誰かが「危ない」と言った気がしたから助かったものの、あたっていたら大阪に行けなかっただろう。
紺色のワンピースに赤のカーディガンを着た。着替えは薄手のトレーナーにジーンズにした。西成区に行くのはズボンのほうがいい。
電車に乗って座席に座る。スマホで電子書籍を読みながら時間を潰した。東京駅に着く。待ち合わせの場所へ行くと菅原はすでに来ていた。一時三十分。梨香子もかなり早めに着いたのに。
「菅原さん、ここまでの電車賃いくらだった?」
「あ、気を遣わないで。私が来たくて来たんだから」
「そう?じゃ、今日の夕飯は遠慮なく食べてね」
梨香子はそう言うと空いている二つのプラスチック製の椅子を指さした。
十五分ほど待って俊太が来た。百八十センチある身長に家で鍛えているという体格。白い肌にブルーのシャツよく似合っている。
「菅原さんですか?初めまして。小泉俊太っていいます」
俊太は名刺を差し出した。菅原もハンドバックから名刺入れを出して俊太に渡した。
最初のコメントを投稿しよう!