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てっちり鍋が来た。梨香子は初めて食べる。仕事の全体会議で月に一度大阪に来るときは、いつも朝早く出てその日に会議に出席し、そのままホテルに直行して朝早く帰るパターンだった。だからたこ焼きですらも食べていない。明日は時間があったらたこ焼きを食べよう。その前に澤田の霊をなんとかしたい。
「明日は西成区に行くんです。そうしたら生きてるか死んでるかわかるでしょう。除霊してもらえません?」
梨香子はそう言って菅原を窺った。アルコールが効いたのかほんのり赤い。
「ええ、ここでは出来ないんで、食べ終わったら外でやりましょう」
菅原を連れてきてよかった。憑かれたままだと不幸になりそうだ。
ビールを飲み終えたので日本酒に切り換えた。
「俺はフグひれ酒にしようかな」
俊太が言う。梨香子は頷いた。明日になって二日酔いじゃなければいいが。
だいぶ酔ってたらふく食べたので店を出る。除霊をする場所を探したがどこも好奇の目に晒されそうだったので明日の昼に行うことに決まった。
帰りはタクシーにした。菅原は西区というところに泊まるらしく、明日の九時に梅田で待ち合わせを決めた。
ホテルに着いてベッドに倒れこむ。そのまま寝てしまいたかったのだがシャワーを浴びた。髪を洗っていると誰かに腕を掴まれた。俊太がふざけているのだと思って文句を言ったら「俺だよ」という低い澤田の声がした。梨香子は慌ててバスルームから出た。俊太は酔いつぶれて寝息を立てていた。
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