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日曜日は曇り空だった。待ち合わせの場所へ行くと菅原は今日も早く来ていて二人を見ると目を細めて微笑んだ。
「昨日はすみません。ご馳走になっちゃって」
電車に乗って西成区に向かう。梨香子は澤田が日雇労働をした理由を考えた。毎月行われる社内全体会議ももちろん、会社は休日出勤や残業が普通にまかり通っている。設計士やCADオペレーターは徹夜も当たり前だ。そんなきつい職場環境でも営業成績の悪い澤田は部長に疎まれていた。だから現実から逃げ出したのだろう。
西成区についた。警察署へ行く。誰に言ったらいいか分からないので窓口にいた女性警察官に澤田の写真を見せて「この人がこの地域で死んでいるか知りたいんです」と言った。
澤田はやはり死んでいた。身元を証明するものを持っていなかったらしく、色々と質問された。俊太はすべての質問に答えた。澤田の奥さんに電話したら泣いたという。
除霊は公園で行った。菅原が塩を撒いて梨香子の周りを両手を合わせて叩いた後、なにかしら霊と話しているようだった。三十分ほどで終わった。
「これで澤田さんは成仏しました」
梨香子は俊太に抱き着いて泣いた。澤田が可哀そうに思った。あの時に事故から助けてくれたのは澤田だろう。
終わり
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