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パチンとモニターが消えて暗闇になったあと、部屋の電気が点いた。梨香子は考える。澤田はなにが言いたかったのか。死んでいるのなら見つけ出して供養してほしいのだろうか。
梨香子は俊太に電話した。
「もしもし、俊太? また澤田さんの幽霊が出たよ。怖かったー。大坂で日雇い仕事をやっていたんだって」
「本当か? 疲れているからだと思っていたが、そんなに見るんじゃ本当っぽいな。大坂で日雇い仕事をしてたのなら西成の辺りだろう。前にテレビでやっていたよ」
「そう、私、今度の土、日に大阪に行ってみる」
「待てよ、女が一人で行くなんて危ない。俺も行くよ。昨日泊まった新大阪のホテルを予約しよう」
昨日のホテルは綺麗だったし、スタッフのサービスもよかった。駅のそばなので新幹線にもすぐ乗れるしいいだろう。
「うん、お願い」
梨香子は電話を切ると、冷蔵庫からビールを出し、ローテーブルの上に置いた。普段はあまり飲まないが澤田のことがあったのでアルコール抜きでは怖くてここに居られそうにない。グラスに入れずに缶のまま三百五十ミリリットルの三分の一ほど飲んだ。
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