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「なんでしょう?」
「私、この近くで霊媒師をやっている菅原と申します。実は貴女とすれ違ったとき、霊が呼んでいる気がしたものですから」
菅原は隙間から名刺を差し出した。梨香子はドアガードを外した。
「尾けてきたんですか?」
「はい。心配だったものですから」
見たところ三十代の半ばから後半のようだ。黒い長袖のワンピース。垂れ目の優しそうな顔。
「お祓いをするとかなら、お金はありませんよ」
「いえ、私が勝手にここに来たのでいいんです。最近、身近に病気か事故で死んだ人はいますか?」
梨香子は澤田のことを言おうか言うまいか迷った。初対面の人は信用できない。
「いたとしても言いません。私、シャワーを浴びるところだったんです。帰っていただけますか?」
「それはすみませんでした。名刺に書いてある私のサイトにアクセスして信用していただけるようでしたらメールか電話をいただけますか?今夜は十二時くらいまで起きていますので」
菅原はそう言うとお辞儀をして帰っていった。梨香子は冷たくしすぎたかなと思ったが他人を簡単に信用したらいけない。
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