2.スターダム

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ダンスのレッスンが終わり、スタジオのドアを出ると、何やら外が騒がしい。 「キャーッ!! ハル、こっち向いて〜!」 「ハル、握手してーっ!」 あ〜ぁ……。 ショーの打ち合わせがあるからと、急いで出て行ったくせに、何捕まってんだか……。 いつもはマネージャーが一緒だから問題ないが、今日はタクシーに乗って現地集合だとか言ってたもんな…。 アキは軽く溜息をつき、立ち止まる。 「キャーッ! アキもいるーっ!!」 ハルを取り囲んでいた女の子達の何人かが、今度はアキの方にも押し寄せて来る。 …って、……そりゃいるよ。 キミ達、今日ここで、イベントの練習だって調査済みで出待ちしてたんだろ? 声には出さず、心の中で呟いてみる。 だけど本音では、有り難いと思う気持ちはちゃんと持っている。 数年前までは、こんなふうに騒がれる先輩タレントを尻目に、一切注目されることも、行く手を塞がれることもなく、スルーできていたんだ。
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