『 Phantom 』

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『 Phantom 』

 ✠✠✠✠✠✠✠✠✠✠✠✠✠✠✠✠✠✠✠✠✠✠✠✠✠ ――ハルは驚きの余り、カッと目を見開いた。 ついさっきまで満席状態だった店の客達が、一瞬にして全て消えていた。 テーブルの上の料理も、 ワインが注がれたグラスも、 客だけではなく、何もかも全部だ。 たった今見た、いろいろな人生の詰まったであろう人達と、その人達に暫し安らぎや幸福を与える物たちの一切が、何もなかったかのように忽然と存在を消した。 自分一人だけを残して……。 そして、天井の電気が数回チカチカと点滅した後で全て消え、店内は途端に薄暗くなった―― ✠✠✠✠✠✠✠✠✠✠✠✠✠✠✠✠✠✠✠✠✠✠✠✠✠ ――忘れるんだよ……お前は俺のこと。 俺と過ごした日々の様々な想い出も全部…… 記憶の彼方に行ってしまうんだよ。 〝 記憶から消える 〟 その無情な言葉を頭の中で反芻(はんすう)しながら、それでも敢えてアキに言いたかった。 「俺のこと、ずっと(おぼ)えてて……」――                   (本文より) *ホラー要素はありません。 BL仕様になっていますが、苦手な方でも安心して読んで頂けると思います。      【2021.10/12〜12/10】 (2013年 執筆作品 2021年 加筆修正)
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