3.クリスマス・イブ

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日が暮れた後の街中は、多くの人々で溢れ返っていた。 きっとこれはいつもの賑わいではなく、これから楽しい特別な時間を過ごす人達の往来。 中には、世間の浮かれ事など関係ないという人もいるのだろうが……。 自分だって、クリスマスだからどう過ごすとか(こだわ)る気など全くなかったが、こうして時間を共有できる相手が居るというのは、幸せなことなのかも知れない。 街路樹には、目映(まばゆ)いばかりのイルミネーションが施されていた。 既にビル群の向こう側に陽は落ちていて、空の紺色が、光の粒たちの(きら)めきを際立たせている。 温かい灯りに包まれている大通り。 建ち並ぶ店の前にもそれぞれの装飾がされていて、クリスマス気分一色だ。 時折、通りを吹き抜ける風は、どこか心地よい冷たさだった。
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