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四季の中でどの季節が好きかと聞かれたら、多分『冬』だと答えるだろう。
勿論、寒すぎるのは嫌だが、頬に当たる風のキリッとした冷たさは結構気持ちが良い。
アキが上京する前に住んでいた街は、都会と田舎が程々に融合されたような場所だった。
駅前はわりと栄えていて、買い物や普段の生活には困らない。
そこからバスで10分ほど走ると、大きな川と河川敷に公園や広場があり、子供の頃はそこで野球やサッカーをしたり、家族や友達と遊んだりもした。
川を越えて吹く風は、いつも心地よかった。
東京へ出て来てからは、感じる風が故郷とは違っていた。
唯一、冬の冷たい風が頬に当たる感覚だけは、あまり変わらないような気がしたのだった。
いつだったか、そんな話をハルにしたことがある。
「あ〜……何か分かるような気がする」
ハルは目を細めて嬉しそうに笑うと、そのまま少しの間だけ目を閉じた。
きっと故郷の川沿いを歩く時の風を思い浮かべて、懐かしんでいたのだろう……とそう思った。
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