3.クリスマス・イブ

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アキはコートのポケットに手を突っ込み、首に巻いたマフラーに頬を埋めるようにして、賑わう街の舗道を歩いていた。 予約の時間より少し遅れるかも知れないとハルに連絡しておいたが、意外に早く着けそうだな。 …多分、この辺り……。 ハルからスマートフォンに送って貰った店の情報を見ながら、スクランブル交差点の横断歩道を渡る。 顔を上げると、賑わう人波の中に、見覚えのある後ろ姿を見つけた。 …ハル! …… しかし、この距離で声を掛けるには、人が多過ぎる。 たいした変装などせず、普段かけない薄く青が入ったサングラスをかけている程度だ。 このサングラスは、レンズ部分が黒でも紺色でもなく、この青の具合が気に入って買ったものだ。 景色が暗くならずに、澄んだ海の中にいるような感じに見えるのに惹かれ、即買いしてしまった。 そして最近伸ばしている前髪を、普段は斜めに流しているのだが、プライベートで出掛ける時は、無造作に下ろして目にかかるようにしている。 サングラスとこの前髪で、あまり人に気付かれずに済むようになった。 冬はマフラーが味方してくれるのも有難い。
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