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しかしハルは、ハットを目深に被り目元がわかりにくい状態にしているぐらいだ。
ただでさえ背が高く、他の人より頭一つ飛び出ているというのに、全くいつも無防備な奴だ。
そして、一人ならバレなくても、二人セットなら気付かれる可能性は格段にアップする。
わざわざ通行人に存在を知らせ、気付かれて騒がれるのはまずい。
アキは歩く速度を少し上げた。
約束の店の前まで来て、少し高い位置にある入口に続く外階段を、昇って行くハルの横顔が見えた。
「あれ? ここって……」
以前、化粧品のCM撮影で使った店……? 多分そうだ。
あの時は裏口に車を停めてそこから入ったから、正面の景観は車から少し見ただけで正確には覚えていない。
でも確かこんなふうに石畳風の外階段があり、一階が普通より高い位置にあった。
そしてこのレトロな建物……
近代的なビルが建ち並ぶ中に、異質で堂々とした風格みたいなものを感じたことを覚えている。
その時は、撮影場所として連れて行かれ、店の名前も覚えてなかったから、ハルから教えて貰った時、全く気付かなかった。
そうか……確か内装も落ち着いていい感じだったような気がする。
…楽しみだな。
アキはハルの背中を目で追いながら、そう思った。
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