3.クリスマス・イブ

8/19
前へ
/259ページ
次へ
しかしハルは、ハットを目深に被り目元がわかりにくい状態にしているぐらいだ。 ただでさえ背が高く、他の人より頭一つ飛び出ているというのに、全くいつも無防備な奴だ。 そして、一人ならバレなくても、二人セットなら気付かれる可能性は格段にアップする。 わざわざ通行人に存在を知らせ、気付かれて騒がれるのはまずい。 アキは歩く速度を少し上げた。 約束の店の前まで来て、少し高い位置にある入口に続く外階段を、昇って行くハルの横顔が見えた。 「あれ? ここって……」 以前、化粧品のCM撮影で使った店……? 多分そうだ。 あの時は裏口に車を停めてそこから入ったから、正面の景観は車から少し見ただけで正確には覚えていない。 でも確かこんなふうに石畳風の外階段があり、一階が普通より高い位置にあった。 そしてこのレトロな建物…… 近代的なビルが建ち並ぶ中に、異質で堂々とした風格みたいなものを感じたことを覚えている。 その時は、撮影場所として連れて行かれ、店の名前も覚えてなかったから、ハルから教えて貰った時、全く気付かなかった。 そうか……確か内装も落ち着いていい感じだったような気がする。 …楽しみだな。 アキはハルの背中を目で追いながら、そう思った。
/259ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61人が本棚に入れています
本棚に追加