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1.二人の陽人
乾いた地面を、土と枯葉を蹴散らし、走る足音がしている。
藤崎陽人は、顔を顰め、歯を食いしばり、額や首筋に汗を滲ませながら必死に走る。
巻いたストールの首元を手で引っ張って緩め、額の汗を手の甲で乱暴に拭い、走り続ける。
秋も深まった晴れた日の夕方、都心から離れた雑木林の中。
鬱蒼と繁っていたであろう木々の葉は、すっかり乾いた色に姿を変えて落ち、地面を覆い尽くすように散乱している。
葉を落とした枝の隙間から眩しい光が斜めに射し込み、藤崎陽人の汗を照らしている。
道などない。
不規則に乱立している木々の間を縫いながら、行く手を遮るように目の前に伸びて来る枝を振り払いながら、息を切らしてひたすら走り続ける。
地面を蹴る度、土煙が上がり、埃の匂いにむせ返りそうになる。
咳き込みそうになる喉が、更にカラカラに乾いて息苦しくなるが、足を止める訳には行かなかった。
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