3.クリスマス・イブ

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「すみません。あの……藤崎陽人さん…でしょうか?」 小声で呼び掛けられ、ハルが顔を上げる。 「あ、はい……そうです」 美希の顔が一瞬で上気して満面の笑みに変わる。 「あ、あの……私、何年も前から大ファンなんです。 冬休みを利用してたまたま旅行に来てて、まさかお会いできるなんて思わなかったので、失礼ながら声掛けてしまいました。ごめんなさい」 「そうなんですね……ありがとう。でも、別に謝らなくていいのに」 緊張気味に、そして周りに聞こえないよう気を遣いながら小声で話す美希に、ハルが笑顔を見せる。 正直、声を掛けられた時、 「しまった……もう見つかった」 と思ってしまった。 でも、こうして気遣いながらも嬉しそうにされると、邪険にできないどころか、嬉しく思ってしまう。
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