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腕時計を見ると20時半。この後誰かと過ごすにしてもまだまだ時間の余裕はある。そう思ってゆっくりとグラスを回していると隣から声を掛けられた。
「こんばんは」
「……どうも」
チラリと見やると、二十歳そこらだろうか。栗毛のショートボブに、ダブついたニット、細身の脚に見合ったタイトなスキニーパンツ。
いかにも今時の若者といった風体の男だが、実際の年齢までは分からない。
「お兄さん後腐れなさそうだね。なに飲んでるの?」
「酒」
「つれないなぁ。俺みたいのは相手にできないってこと?」
いきなり不躾に手を握られ、龍弥は不快感を露わに眉を寄せて手を振り払う。
「乳臭いガキは喰わないんだよ」
「酷い言い草。そんな言い方しても食いっぱぐれないって自慢かな。大人のヨユーだね」
「酒が不味くなるから向こう行ってろ」
「残念。じゃあね」
意外にも聞き分けよく立ち去ったと思ったら、後ろのボックス席で仲間らしいやつらと騒がしく何か話している。
若さゆえの遊びか仲間内で賭けでもしていたのだろう。誰が勝とうが負けようが、龍弥にとってはどうでもいいことだった。
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