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(今日は呑むだけにしとくか……)  何気なく店内を見渡すと、ここもだいぶ客層が変わった。いや、自分があの頃よりも大人になったと云うことだろうか。 「俺もオッサンになったな」  姿勢を戻してボソリと呟くと、手元で傾けたグラスの中の氷が揺れる。 「へえ、どの辺が?」  不意に声を掛けられて顔を向けると、僅かばかり眉を引き上げる。二つ向こうの席からこちらを見ている男には見覚えがあった。 「誰かに会う度に、こんな風に同窓会みたいな空気になるところだよ」 「あはは、言えてる。亮ちゃん、おかわり」  慣れた様子で亮太に声を掛けると、隣に座っても?とわざとらしく微笑んで、いつぶりだろうねと龍弥を肘で突く。 「さあな。ここに来たのは久しぶりだし、いつもは呑みに出ても巽の店に顔出してるから。お前こそ、どうしてたんだよテツ」 「そうだったんだ。俺は逆に巽さんのところに行けてないからなぁ。ほら、俺一途だからさ。亮ちゃん一筋よ」 「またあ。テツは口が上手いね。そもそも龍弥は巽くんと気が合うんだよ。はいどうぞ」  亮太が差し出した新しいドリンクを受け取ると、テツと呼ばれた男はグラスを掲げて再会に乾杯と上機嫌で氷を揺らす。なんだかんだ、この男とも5、6年の付き合いにはなるだろうか。 「亮ちゃんと巽さんて、店の雰囲気も客筋も全然違うよね。じゃあなに、龍弥が遊ばなくなったって噂はホントなの?」  テツはカウンターに肘をついて身を乗り出すと、揶揄うような笑みを浮かべたまま、あの龍弥がねと顔を覗き込んでしたり顔をする。 「噂ってなんだよ、人が枯れて終わったみたいな言いぶりだな。俺は仕事が忙しいんだよ。ここいらもガキが増えたから面倒避けてるだけだよ」 「どの口がそんなこと言うんだろうね、亮ちゃん。龍弥に弄ばれた仔たちに聞かせたいよね」 「はは。そうだね」  亮太も口角を上げるが、龍弥と目が合うと複雑そうな顔で笑う。
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