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テツは知らない。龍弥があの人と別れてどれほど不安定でおかしくなったのか。
10年も前のことだ、夜毎男を変えて同じ人間とは二度と寝ない。龍弥のその行動の切っ掛けを知らなくてもおかしくない。むしろそれを知ってしまっている亮太の方が珍しい部類の人間なのだ。
今となっては後腐れなく遊ぶ男だと、それだけが認知されていれば、周りの噂話など龍弥にとってはどうでもいいことだ。
「あれれ、亮ちゃんが龍弥と見つめ合ってる。やっぱり亮ちゃんは龍弥みたいなタイプが好きなの?俺一途なのにな」
「お前が一途なら、この界隈の奴はみんな一途だろ」
龍弥は表情を和らげて隣のテツを揶揄う。狭いコミュニティでは、何かしらの情報が入ってくる。人の口に戸は建てられない、つまりそう云うことだ。
「だって亮ちゃん全然相手してくれないからさ。俺だって独り寝は寂しいからね。それにそうしてた方が、亮ちゃんがソワソワしてくれるかも知れない」
テツは調子良くそう言ってのけると、悪びれた様子もなく口角を上げる。
呆れたように龍弥と亮太が目を合わせると、そう云う所がつけ入れない絆を感じて嫉妬してしまうとテツは口を尖らせた。
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