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エピローグ
――社会人になって、私の生活リズムはガラリと変わった。
他にも変わったことがある。全く、男も女も懲りないなと思う。第三の挑戦者が現れたのだ。人はきっと自分だけは大丈夫だと思うのだろう。母が再婚することになった。
「未央ちゃん、こちら大久保広治さん。おつきあいしてるの」
って、てっきりまた店員の男の子とでも間違えてたのかと思った“こうじ”が母の彼氏だったことにも驚いたが、母に彼氏がいたことに全く気付きもしなかった自分にも驚いた。……私って、疎すぎでしょ。それとも母が隠すのがうまかったのだろうか。新しく父になる予定の人は母より少し年上のとても穏やかな人だった。
「うちの母、あんなんですけどいいんですか? 」
「もちろんだよ。僕はね、お母さんの誰にでも親切で愛想の良い所を好きになったんだから」
広治さんがそう言ってくれたので、私は余計な心配はしないことにした。母の再婚が決まってから広治さんはしょっちゅう家に来ることになったし、そこに皇士朗さんも呼んで四人で食事をすることもあった。
「皇士朗くんは、ここのマンションの8階に住んでるの。二人が出会えたんだからこのマンションに引っ越してきて良かったわぁ! 」
嬉しそうに広治さんに皇士朗さんの事を説明する母に、私と皇士朗さんは苦笑いした。本当の出会いは言えるわけがないのだから。
「へぇ。そんな出会いもあるんだね」
「ねー」
「ねー」
私たちはわざとらしく話を合わせた。
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