第1話 呪いの系譜

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第1話 呪いの系譜

 女の男運は父親で決まると誰かが言った。  そんなバカな。それなら私の男運は最悪ということになる。更に、父親に左右されるなら、その父親を選んだ母親の男運に委ねられているのではないか。それすなわち、母親の男を見る目に準ずる。   どのみち最悪だ。最低最悪。うちの母親、奈津子43歳、バツ2。母は一癖ある女なのだ。  私の父親は本人曰く“純愛”の不倫で家を出て行った。不倫に純愛を付けるようなクソ男だったというわけ。ただ幸いして純愛だと酔っていたもので身一つで出て行って、母と私にマンション(住むとこ)を残してくれた。これが、小学校低学年の話。それから母は再婚し、新しい父親は、長きに渡って良き父であった。  が、高校に上がった頃、父2号はしでかしたのだ。忘れられないおぞましい光景だった。父が知らない女とベッドで抱き合っていたのだから。母と二人で母の実家へ泊る予定だった日、早く帰ってみるとそんな状態だった。それを母と並んで見たのだから、おぞましい以外の言葉は出てこなかった。  さすがに“純愛”などとは言わなかった。完璧な浮気だったのだ。父はありとあらゆる謝罪の言葉と態度を試みたが、母は許さなかった。父は家を出て行った。  正直、母が父を許さなかったのには驚いた。なぜなら、母はいつもふにゃふにゃと笑って、怒ったところなど見たことがないからだ。父もそうだったのだろう。謝れば許してもらえる。そう思っていたに違いなかった。
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