2215人が本棚に入れています
本棚に追加
/201ページ
「意外だった」
私が言うと、母はうふふと笑った。こんな時にさえ笑うのだから。けして無理をして笑っているのではない。母はこういう女なのだ。
「ママにだって地雷はあるわよう。家に入れるのは、ダメ」
「ああ、気持ち悪いね、引っ越したい」
「うん。もうね、二人になったんだし引っ越そうか。未央ちゃんが高校に慣れて、余裕が出来てからでも」
「うん」
母は、そう言った後、ぽつりと溢した。
「でもね、お父さんの気持ちもわかるのよ。ホテル行けるくらいお小遣い渡してなかったから」
呆れるフォローと、娘に何てことをと思うが、母子間において、うちは割と性に奔放な家庭だった。
「どっちにしても浮気した方が悪い」
「うふふ、そうね、未央ちゃんママの肩もってくれるの? うれしいなぁ」
母の目から見て私はそれなりに父に懐いているように見えたのだろうか。父だった。でも男になってしまうと嫌悪感しかなかった。それに、こんな時にもうふうふ笑ってられる母もどうかしてると思う。
母にとって男とは何だろうか。焦りも見えなければ、落胆も見えない。いつもは感情豊かなのに。母は、誰にも執着してないように見える。
こんなことがあって、私の男運とやらが良いわけはなかった。
だが、それも全くどうでも良かった。こんな家庭の事情が背景にあってか、私は恋愛にみじんも興味が持てなかったからだ。特に男に理想は描けない。なのに、世の中は恋だ愛だとそんなので溢れかえって馬鹿馬鹿しい、そう思うのだ。
最初のコメントを投稿しよう!