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第三話 十日前
今日、透子は学校で普通に過ごしていた。驚くぐらいに普通で、ここ数日の事が嘘のようだ。でもすれ違った時や休み時間に、俺と透子は今までもそうだったというように気軽に話していて、この数日が現実にあったことだと実感する。
一度だけ、急に仲良く話しだした俺たちを不可解に思ったのか友達に、付き合ってるのか、と言われた。幼馴染なんだと答えたら、深く突っ込まれることもなかった。それに少し安心した。高校生じゃ、カップルなんて珍しくもなんでもない。中学生の頃、男女が二人でいるだけで囃し立てられていたことが懐かしい。
透子も同じようなことを言われていたけど少しだけ困ってから否定して、ただそれだけだった。
「広大、今日、部活?」
「そうだけど、何?」
何かあったのかと透子のそばによる。
「何も無いよ、聞いてみただけ。部活行ってきて。わたしが広大とってたから部活久しぶりでしょ?」
数人の女の子が透子を呼ぶ声がした。どうやら一緒に遊びに行くらしい。たまに透子と一緒にいるところを見る橋本さんが大きく手を振っていた。
「がんばって。また、明日。二時に駅、約束忘れないでね」
「おっけー。また、明日」
着実に迫ってるその日の前に透子は学校では変わりない。もしかたら、からかわれてるんだろうか。でもそんな子でもなかったはずだ。もやもやが薄く心に這っているけど、今日は俺に用はなく、また明日と言われてしまえば、おとなしく部活に行くしかなかった。
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