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よく見る顔は、嬉しそうにニヤついている顔だった。
それでも、自分とすれ違う時には「使用人」の顔でいる。
名前は知らなかったが、興味はあった。
替玉の練習の時も、すぐ機嫌良くなったり、すねたり、見ていて面白かった。
ずっとお慕いしていたセーラ様とは、違う人種のようだった。
いつから…と言われると、正直自分でもよくわからない。
襲撃の際、「替玉の娘も死亡した」と聞いた時は、ひどい絶望を感じた。
後で、入れ替わっていた事を知っていたのは自分とセーラ様だけだったと知ったが。
任務も大事だが、彼女も大事だった。
「先に荷物を置いて…お父様に報告に行くわよ」
セーラ様専用の執務室に入ると、目を疑う光景があった。
広場がよく見える窓が1枚だけ、キレイになっていたのだ。
その床に、掃除道具が散乱していた。
他の部屋の窓は新しい「窓拭き係」に任せても、セーラ様のお部屋の窓は誰にもさせていなかった。
「誰が…!」そう叫んで、寝室へ走り出すセーラ様。
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