最後の都市

2/4

46人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
そのお美しいセーラ様が、妖艶な格好で私をベッドに誘う。 「わ、私はあちらのソファで寝させて頂きますぅ!」 顔を真っ赤にした私をセーラ様は笑う。 「冗談だ。王宮から丸一日馬車での移動は疲れただろう。明日のパレードに疲れた顔をされていたら困るからな。ベッドでゆっくり眠ってくれ。私は少し、仕事をしてから寝るから」そう言って、ベッドの上で、自分の横をポンポンと叩く。セーラ様の枕元には、報告書などの「仕事」が待っていた。 「セーラ様も、早くお休みになってくださいね」 これ以上の押し問答は逆にご迷惑になると思い、お言葉に甘えることにした…が、夜中何度も目が覚めてしまった。 寝たふりをしたままの確認だが、何度起きてもセーラ様はまだお仕事をされていた。 どの都市に行っても、セーラ様の夜はずっとお仕事だった。 朝も、少し私の方が早く起きるくらいだ。 3日もすると、私は夜中に起きることも無くなったが、毎朝セーラ様の枕元にある処理済みの仕事の量を考えると、夜遅くまで起きてみえるのだろう。 都市から都市への馬車での移動の際、私がダーク様と「ルカ王子」になり切るための練習や、雑談している間も、王宮に帰ったら剣術を教えてくれる約束をした時も、私が寝てしまっている間もずっとセーラ様はお仕事をされている。 一体いつ休まれているのだろう…。 セーラ様のために私が出来る事なんて、立派に「ルカ王子」を演じる事だけ。 それも、ほとんど喋らないで済んでいる。 晩餐会でのルカ王子に対する質問も、全てセーラ様がお答えしているから。 本物のルカ王子だったら…。 あれ? 本物のルカ王子がいても、セーラ様の仕事の量は変わらないんじゃない? 「今日が最後のパレードだな」悩む私の背後で、セーラ様が目覚められた。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加