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「何で…何でこうなるのだっ!」
ダーク様の腕の中で肩を震わすセーラ様。
勢いでついてきてしまったけど、いいのかな、私ここに居て。
でもこのルカ王子の格好じゃどこにも行けないし…。
今回ばかりは、不謹慎な色眼鏡で見る気がしない。
セーラ様は、ルカ王子が戻ってくることを期待していたのだろう。
王族は政略結婚なんて普通の事だと思っていたのかもしれない。
「こんな年増の仕事ばっかりで可愛げのない女なんて…逃げ出したくもなるな」
セーラ様、23歳は年増じゃありません…!と言いたかったが、言えなかった。
「そんなことはありません。セーラ様は、魅力的な女性です」
ダーク様が間髪入れず、そう言ったからだ。
「仕事熱心なのはこの国の民の為。セーラ様の強さも美しさも、ご自身の努力の賜物だと存じております。ずっと…お側でお守りして参りましたから」
心臓が、嫌な感じにドキドキする。
「私は…少なくとも私は…」ダーク様が発言をためらう。
嫌だ、やめて。その続きを、言わないで。
どうしよう、この場から逃げ出したいのに、動けない。
ふっと、ダーク様の腕越しにセーラ様と目が合った。
つい、逸らしてしまった。
「…ダーク、ありがとう。落ち着いた」ダーク様の腕から離れた。
「もう寝る」
セーラ様が着替え始めたので、ダーク様は慌てて退散する。
「セーラ様を頼んだぞ。ドアの向こうに待機しているから」と去り際に、私の耳元で囁いていった。
ドアが閉まった瞬間、私の目から一筋の涙が溢れた。
ダーク様の私への優しさは、全てセーラ様の為だったんだ。
当たり前よね。
わかっていたけど…何でこんなに苦しいのだろう。
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