46人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
「本物がいるし、もう変装は必要ないだろう」
そう言ってセーラ様は、私に「女性」の服を与えてくれた。
「朝からダークに買いに行かせたのだ、それ」ニヤつくセーラ様。
私の気持ち、絶対バレてる、絶対遊んでいる…!
シンプルだが、上質の布地、上品なデザイン。
セーラ様がお召しになるものとは違う、私の為に選ばれたワンピース。
靴も、ワンピースに合わせて購入して頂いた。
「私のお給金では、多分払えません…」
ダーク様が私の為に選んでくださったものなら、全財産はたいてでも買いたいところだが、現実そういう訳にはいかない。
そして、王宮に戻ってからはこんな高そうな服を着て行くような所はない。
「良いのだ。今回の事の迷惑料と口止め料、日当、あと…髪?これだけは足りないから、また王宮に戻ってから給金を渡そう。さ、朝食にするから着替えてきて」
頂いたばかりのワンピースに着替え、朝食の部屋に向かう。
給仕をしているダーク様が、私を見て一瞬固まった。
そして、目を逸らした。
「おぉ、よく似合うじゃないか。さ、座って」セーラ様がフォローしてくださった。
一緒に朝食を取ることを許されたルカ王子が、ぽかーんとした顔をし、
「俺が女装したら、こんな感じなのかな」と呟いた。
ぶっ!と吹き出すダーク様。
あ、さっき目を逸らした原因は、決して「似合う」とか思ってくれたんじゃなく…そっちね。
それ以来、ダーク様は私と目を合わせてくれなかった。
最初のコメントを投稿しよう!