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帰路
「どういう事だ、これは」不機嫌なダーク様。
「セーラ様の、ご指示です」男装した、私。
「ルカ王子のお命が狙われてはいけないと、私が替玉を」
帰路2日目にして、新しく買い足した馬車にセーラ様と女装してマントを被ったルカ様が乗り、こちらの馬車には男装した私とダーク様。
「これではまたルカ王子が脱走を企てた時、対応できないではないか!」
「本当は、セーラ様が…最後に一度、ルカ王子と二人きりでお話がしたいとおっしゃって…」
セーラ様から、これ言ったら黙るから、という切り札を貰っていた。
読み通り黙りはしたが、気が気でないようだ。
「次の休憩までですから。この森を越えたらすぐですよ」
セーラ様の本当の目的は、多分、私の為だ。
ダーク様とお話出来る、最後の時間をくださったのだ。
だからと言って、世間話ができる雰囲気では無い。
沈黙が続いた後、ふと、ダーク様が真顔で口を開いた。
「男装より、女装の方が似合っているぞ」
……ん?
「ダーク様、もしかして喧嘩売ってらっしゃいます?」
ダーク様は不思議そうな顔をし、「あ」と、気がついた。
「すまん、間違えた!女装じゃなくて…何というのだ?あぁ、全く!」
顔を赤らめて、焦るダーク様。
その表情に、思わず笑ってしまった。
「も、もうすぐ森を抜けるな」
誤魔化すように窓の外を見た瞬間、「何!?」とダーク様が叫んだ。
それと同時に、馬車に物凄い衝撃があり、横倒しになった。
ドッドドーン!
何度も、大きな音と衝撃。
私は、ダーク様に抱きしめられ、横倒しの衝撃から守られた。
ダーク様は「ここにいろ」と私を残し、馬車から脱出していった。
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