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沈黙
「皆が、全員でお礼を言いたいと計画していてね。セーラ様が目覚めてからの方がいいと思っていたら…こんなに遅くなってしまった。すまん」
「いえ、個別には…何度もお礼を言っていただきましたよ」
確かに、お守りする対象が眠ったままなのに、自分達が無事だったのを喜ぶのは気が引けるだろう。
「あと、服を台無しにさせてしまった事を、皆、気に病んでいてね」
大きな箱を開けると、ワンピースが入っていた。
「前にセーラ様の命令で購入したモノより…上等では無いのだが…今回は、皆の気持ちを集めて購入したから」
「とっても嬉しいです。ありがとうございますと、皆さんにお伝え下さい」
これでも私にとっては十分過ぎる程上等だ。
「ダーク様、センス良いですね。前回のも、今回のも、素敵です」
ダーク様が私のことを考えて選んでくださった…それだけでも幸せだ。
「…コーヒー、冷めるぞ」
ダーク様は壁にもたれ、立ったままこちらを向いてコーヒーを飲む。
あぁ、ベストアングル…いただきです。
「いただきます」
あ、結婚式前日に飲んだ、あのコーヒーの味だ。
「コーヒーって、色んな味があるんですね。濃い薄いだけでなくて…」
5つも都市を訪問し、出されたコーヒーはどれも上質なコーヒーで、朝食後に淹れてくれたのは全てダーク様だったが、私は…。
「このコーヒーが一番美味しいです」
ふっと、ダーク様が笑った。
…あぅっ!その笑顔で、どんな苦いコーヒーも甘くなりそう…。
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