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ローゼは、祝賀会のあの事件以来、ずっと眠ったままだった。
傷を塞ぐ手術自体は成功したというが、一向に目を覚まさなかった。
俺は「結婚を申し込んだ身だ」といって、ローゼを引き取るつもりだったが、セーラ様は「返事はまだなのだろう。私の寝室で看る」といって聞かなかった。
なので私は、専属の使用人が使う、続きの小部屋で寝泊まりしている。
寝室の大きなベッドに、ローゼが眠っている。
傍らに、医者と助手2人が、静かに立っていた。
「4日前に、目を覚まされたのです」
「本当に、目を覚ましたのか?今、眠っているのは…」
「今日、リハビリと称して、窓拭きを始めたのです。…助手が、床で倒れているローゼを見つけました」
「多分、疲れて眠っているだけかと。では、失礼いたします」
医者と助手が去って、セーラ様は「良かった…」と呟いた。
「お父様に、視察の件、報告してくる」
真っ赤な目をしながら、セーラ様は寝室を出ていった。
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