妄想

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来国して1か月間、毎日ルカ王子は結婚式の準備に振り回されていた。 まぁ、もう明日ですしね、結婚式。 先日ルカ王子をお見かけした時は、少々お疲れ気味だったようだけど、昨日はむしろ楽しみで仕方がない風だったな。 今、お部屋にみえないけど、明日のリハーサルでもしているのかしら。 部屋の中央に飾ってある、真っ白で豪華なタキシード。 これを着たルカ王子は、天使のようにお美しいのでしょうね。 でも私は、黒髪で背が高くて凛々しいダーク様の方が好みですけど。 毎日一人妄想にふけりながら、窓を磨き上げる。 さ、ルカ王子のお部屋の窓拭き完了! 次はセーラ様のお部屋だ。 王宮の窓は膨大にあるため、同じ窓は週に一度の割合で拭くが、セーラ様のお部屋はお香を焚くので、毎日拭く。 道具を片付け終わると、突然ダーク様がルカ王子のお部屋に入ってきた。 「窓拭き係…お前、一人か?」 ダーク様が冷静を装いながらも、走ってきたのか息が上がっているのがわかった。 「はい。今この部屋は私のみでございます」 妄想の本人が突然出てきて、心臓が止まるかと思うぐらいびっくりした。 それにしても…ちょっと乱れた髪が、汗が、色気あり過ぎるっ! 「そうか…邪魔して悪かったな。作業を続けてくれ」 何かあったのか気になるが、余計な詮索は、しない。 「とんでもございません。こちらのお部屋の作業は終了致しましたので、失礼致します」一礼し、ダーク様を残して部屋を出た。 これ以上お部屋に二人きりでいたら、鼻血が出そうだ。 内容はともあれ、お声をかけて頂けた。 私が「窓拭き係」という事を存じて頂いていた。 あー!今日は幸せな日だわっ。 何があっても許せる気がする…。 軽い足取りで、セーラ様のお部屋に向かった。
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