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逃走
明日の結婚式の後は王宮で晩餐会。
その後数日間は主要都市でのパレードや晩餐会。
その間はご公務が滞るので、式前日の今も、セーラ様はお忙しそうだ。
執務室の窓を、静かに、邪魔をしないように拭く。
気難しい顔をしていると思ったら、ふと、ウェディングドレスの方に目をやり、嬉しそうに笑うセーラ様が可愛い。
コンコン…。
「…失礼します」暗い顔のダーク様が、お部屋に入ってきた。
やっぱり何かあったのかしら。
ダーク様が、セーラ様に小声でお話しし、手紙をお渡しする。
「はぁ?」セーラ様が、手を震わせながら、手紙に目を通す。
ダンッ!
両手をテーブルに叩きつけ、立ち上がった。
「…よく探したの?」
「既に王宮は隈なく捜索し、只今王宮の外、森に至るまで捜索しております。国境には即座に伝達し、通行人や荷台をチェックさせております」
「朝食には王宮に居た。まだそんなに遠くへは行ってはないはず!私も…」
走り出したセーラ様の足がもつれ、ダーク様に抱えられた。
ダーク様の腕の中で、両肩を震わすセーラ様。
「何で、…何でこうなるのだ!」
窓拭き係にでもわかる。
結婚式前日、花婿が逃げた。
「どうして?昨日はそんな素振り見せてなかったじゃない…」
昨日は機嫌よかったという事は…多分計画的だ。
逃走する目処がついたといったところか。
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