46人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
プロローグ
「何で、何でこうなるのだっ!」
泣き崩れる皇女様。
そのお方を黙って支える騎士様。
明日は、皇女様の結婚式。
用意されたウェディングドレスが、黙ってこちらを向いている。
お美しい皇女様ですもの。
このドレスを纏えば、世界一美しい花嫁となる事でしょう。
…隣に花婿が居れば。
「どうして?昨日はそんな素振り見せてなかったじゃない…」
涙と怒りと悲しみに染まった皇女様のお顔は、背筋が凍る程の美しさだった。
「そこの窓拭き係!」
窓を拭いていた私はビクッと全身を震わせた。
…聞き耳立ててチラ見していたのがばれたかしら。
「こっちにいらっしゃい。早く!」
冷酷非道と噂される皇女様に指名されて、軽やかな足取りで側にいく使用人はいないだろう。
私はビクビクしながら、近くまで寄った。
「ちゃんと立って」お化粧が崩れながらも美しく鋭い目で、私の頭の上からつま先までじっくり見つめる。
「あなた、名前は?」
「ローゼと申します」
皇女様は最後に私の瞳をじっと見つめ、ニヤリと笑う。
「ローゼ、あなたは今からルカ王子。私の花婿だ」
最初のコメントを投稿しよう!