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二度と戻る事は不可能……。
「で、でも……大丈夫だよ、ね?」
「……この術は一発勝負、肉体と分離した魂は1秒足らずで高い所へ昇る。故に、心臓を抜き取るのと同時に儂は御前の魂を捕まえねばならぬ。それに失敗すれば……」
腕を組む倭様の手先が震えている。失敗すれば私は本当に死ぬ。その時私の意識はどうなってしまうのだろう。分からない事だらけだし、不安はある。でも一番不安に思ってるのは……。
「倭様……」
私は彼の手を握った。
「ナオ……」
「大丈夫。絶対成功する……ね?」
そう声を掛けると彼の表情が少し和らぐ。再び私を抱き締めてくる。
「御前は儂が眠りの術を掛ける。故に意識は夢の世界に居るやもしれぬが……だが絶対に成功させてみせる。ナオが消えるのは嫌じゃからの」
そう言った倭様はまた私の事を優しく抱き締めてくれた。暖かくて大きくて包み込まれていると心の内側から解きほぐれていくのが分かる。妹の事も両親の事も、全ては何もかもが過去の事……遠い日の記憶……忘れてしまいたいもの、だからこの先も──。
「大丈夫じゃよ、御前の事は儂が必ず……」
知らずのうちに倭様を強く抱き締めていて、ハッとなる。咄嗟に離れようとした時……。
「ナオ……」
「あ、倭様……っ!?」
「っと!」
──ドサッ……。
体制を崩して倒れてしまった私の上に彼が覆い被さるように乗っている。
服がはだけてしまって……。私と倭様は少しの間、この状態で見つめあっていた。
「……綺麗じゃ、ナオ……御前は誰よりも美しい。儂が言うのじゃから間違いない」
「倭様……ありがとう、本当にありがとう。私は貴方の為ならこの命……喜んで差し上げます」
そう口にして頬に添えられた手と手を重ね微笑んだ。彼の顔が近付いて目を閉じると、額に温かな感触……同時に恥ずかしさが襲う。
「倭様……このお命、貴方の手で」
「嗚呼……必ずや成功させるとも……安心して身を任せておくれ、ナオ」
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