漆話 情愛

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 暫く熱い口付けを交わして、唇が離れると名残惜しく見つめ合っている時だ。人の気配がして私は咄嗟に離れた。 「……ナオ」 「た、鷹様……」  彼を見ると胸が痛み出す。ズキンズキンと激しい痛みに襲われて泣きそうになる。 「ナオ、私には分かっていた事だよ。御前が主を好きだと言うのは分かっていた……私に遠慮して本音を言わないのはとても悲しく心苦しく、主にも申し訳が無い。だからいいんだ。御前がそんなに泣く必要なんて無いんだよ」  私は彼の優しさにただ感謝した。傍から見れば酷い奴だと思われたって仕方ない事だもの。私の中にあるだという感情の区別が付けられなかったせいで、鷹様を……。 「ナオ、勘違いするな? 私は御前を好きだし愛してはいるが傷つけられたなどとは微塵も思ってやしない。そうやって自分を傷付けるのは止めるのだ、主が悲しむ」  傍で聞いている倭様を見上げると優しく笑って頭を撫でてくれた。どうしてこの二人は私を責めないんだろう。どうしてこの二人は……こんなにも優しくしてくれるの……。 「ナオ、御前は大分勘違いをしているのう」  そう言われ私の肩を抱き寄せると倭様は私の髪に口付けをした。それを優しく見守る鷹様、何故か顔を見れない。 「御前は何も悪くないのだよ、ナオ。自分を否定する必要も無い、儂らが御前を責める必要も無い。御前が咎められる事など何も無い」 「どうして……だって私は、鷹様に……」
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