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【第3章】捌話 婚礼の儀(前編)
「どうかしたのか?」
考え込む私を見て倭様も同じように首を傾げていた。
「あの、婚礼の儀って……終わったんじゃ」
「……終わってなどおらぬよ。鷹と儂が御前に想いを告げただけじゃ。本来の婚礼の儀は……」
そう言った後、倭様は口ごもってしまう。どうしたのだろうと言葉を待っていると……。
「主、私がご説明しましょうか?」
「……いや、良い。平気じゃ」
突然辺りの空気が少し変わった気がする。私は身構える。
「本来の婚礼の儀は……わ、儂がナオを……」
言いにくそうにしている。もしかして恥ずかしい事を……そう思うと体が熱くなってくる。視線を床に落としていると……。
「こ、殺さなければならぬのよ……」
「……え?」
殺す? どういうこと? 思わぬ言葉に硬直する。私は……殺されるというの?
「ちょっと……待ってよ……殺すって……」
「せ、説明する。聞いておくれナオ。此処は本来……現世の魂のみが来る場所なのだ。生きた人間は長居出来ぬ。魂と肉体は無理矢理引き剥がされ、今の肉体も魂もバラバラになってしまうのだ。そうなると、御前は消えてしまう……」
なんて事……。私はやっと好きな人と結ばれるとそう思っていたのに……。やっぱり私は誰とも結ばれないの?
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