【第3章】捌話 婚礼の儀(前編)

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「そうならぬように、儂が一度御前を殺さなければならぬのだ。殺された肉体は消えてしまうが、魂が残る。御前の魂に刻まれたナオの肉体を再び復活させ肉体という器に御前をまた宿らせる事で、ナオはこの地で生きてゆける」  話が追いつかない。けど、殺されないと私はここで一生暮らす事が出来ないということ。 「殺しはするが痛みはない。大丈夫だ。すぐに終わる、御前はとしてこの地で生きてゆく事になる。そして、この儂と婚礼の(ちかい)を行う、それをする事で生涯共に生きてゆけるのだ」 「婚礼の誓? 婚礼の儀とは違うの?」 「婚礼の儀は御前を死者にする事、婚礼の誓は生涯共に離さぬと約束をする事なのだ。それが終わって初めて、儂らは夫婦(めおと)となれるのだ」  夫婦……その響きはまだどこか、擽ったい。胸の奥がザワッとする感じだ。 「倭様と夫婦に……」  私を想ってくれる人がもう一人居るのに、そんな気持ちを抱えて結婚なんて……。 「ナオはどうも難しく考え過ぎる様だのう……」 「もう少し早く気付かせていれば良かったですね。ナオ、私なら本当に大丈夫だ。私は主と御前と共に過ごせるだけで幸せであるし、何より私の尊敬して止まぬ主の妻だ。私は安心して任せられる」  鷹様は優しい……。だからそんな事を……。本当は辛いはずなのに、それなのに私に気を使っているんだ。だから……。 「ナオ。御前が私を思うなら主と幸せになってくれ。私は二人を見守らせて貰う。その幸せを見せてくれればそれで良いから」
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