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「……なるほど」
「まあでも、私は主だからナオを任せられるし安心して傍で見ていられる。けれどこれが他の男なら話は別さ。その時は私の手で幸せにすると誓ったろうね」
そう言ってニッコリ笑う鷹様……。その微笑みには、後悔も悲しみも苦しみもないように見える。あるのは、本当に喜んでいる嬉しさ……。
「流石は鷹だのぅ……憎い男だ」
そう言いながらも二人は仲良さげに笑い合っている。
「だからね、ナオ。御前の口から、堂々と言っておやり。御前は、誰が好きなんだ?」
その顔は母のようで、父のようでもある。幼い子供をあやす優しい大人……。
「私は……」
倭様をちらりと見やる。ふ、と微笑む顔にまた胸がトクンと鳴る。ドキドキして、でも優しくて心地好くて……。
「私は、倭様が好きです」
そう言葉にすると、心がスッと軽なっていくのが分かる。鷹様のニコニコした顔と、倭様の嬉しそうに笑う顔……これで、良かったのかな。
「ふふ、主、良かったですね。これで私も婚礼の儀の支度を進められます。ナオ、私は席を外す。ふふっ、主と蜜事でも──」
「はよ、行かぬか!」
茶化した言い方に照れる倭様とそれを面白がる鷹様を見て、私は何とも言えない気持ちになる。でもそれは、悲しさとは違うものだった。
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