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4 -番外編-
ギシギシとベッドがリズム良く軋む音、そして二人の洗い息遣いが、狭い部屋にいやらしく響く。
「ん、ぁ……っ、あ、ンっ、ぅ」
「く……っ、はぁ、ぁ……とーま、さん……っ!」
目の前には、愛しい愛しい恋人の秋一郎。ぎゅっと目をつぶって眉間に皺を寄せる彼は、見るからに余裕が無さそうだ。熱い息を吐きながら、ゆっくりと冬真の名前を呼んだ。
「っ、はは……っ、俺、幸せ……冬真さんのナカ、っ、すごく、きもちい……」
力なく笑顔を見せる秋一郎に、胸がきゅっとなった。思わず、彼のものが出入りする後孔をぎゅう、と締め付けてしまった。すると彼がまた気持ち良さそうに息を吐く。その表情が堪らなくて、また胸がきゅっとなり、後ろを締め付ける。この繰り返しでキリがない。
「ぅ、あ……冬真さんっ、も、俺……出したいっ」
——ああ、いいよ。俺も……。
うまく言葉には出来なかったが、そういう意味を込めて目の前の愛としい身体にしがみつく。すると、秋一郎は夢中で腰を動かし始めた。
彼のもので後を貫かれているというのに、不思議と全く痛みを感じないし、苦しくもない。気持ち良さと多幸感だけが、冬真を支配している。
「は、あ……っ、冬真さん、とうまさん……っ、好き、大好き……!」
——俺も、好きだよ。
最奥を貫かれ、パチン、と何かが身体の奥で弾けるような感覚がした。
***
「……ま、冬真! ねえ冬真ってば! いい加減起きなさいよ!」
「…………んあ?」
ドンドンドンっ、と激しいノックの音と母親が呼ぶ声で目が覚めた。
さっきまで見ていた天井と違うし、寝ていたのはベッドではなく敷布団。そして、なにより目の前にいたはずの秋一郎がいない。
さっきのあれは夢だったことに気付き、冬真は頭を抱え、盛大なため息を吐いた。三十路手前に、あんな鮮明な淫夢は情けなさすぎる。恥ずかしすぎてネタにもならない。
「……んだよ、起きてるよ! 何だよ!」
思わず自室のドアの向こうにいる母親に当たってしまった。これも情けない。
「店の水道がおかしいの! 来て、ちょっと見てくれない?」
「あー、わかった。行くから、先に店降りてて」
そう言って布団から出ようと起き上がった、その時。
べちょり、と何かひんやりした嫌なものを下半身に感じ、冬真は動きを止めた。
まさかな……と思いながらパンツの中を確認して、冬真は再び大きなため息を吐くことになった。
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