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 顔を上げた秋一郎と、ばちっと目があった。涙の膜が張った色素の薄い瞳はまるで宝石みたいに綺麗だった。キラキラしたそれは冬真にとっては眩し過ぎる。ふいと視線を逸らした。 「……冬真さん」  うっとりとした、熱の籠った声で名前を呼ばれる。ギジリ、とベットが音を立てた。秋一郎の影がベッドに仰向けになった冬真の上に覆い被さった。 「ねえ……俺のこと、ちゃんと見て」  秋一郎の両手が伸びてきて、そっと冬真の両頬を包むように触れた。秋一郎の方を向くように抑えられ、自然と視線が絡み合う。  重なる視線がキラキラした物から、欲が入り混じったギラギラとしたものに変わる。その変化に、ドキリと胸が跳ねた。  徐々に秋一郎の顔が近付く。これは、きっとキスされる。それに気付くと、冬真の身体に異変が起こり始めた。  バクバクと爆発するんじゃないかってほど心臓はうるさいし、体はバキバキに固まって動かない。顔に集まった熱が全く治らない。  ——なんだ、これは。キスなんて、初めてでも何でもないのに!  視界が秋一郎でいっぱいになる。やばい、と思ってぎゅっと目を瞑った。すると。    ふに、とした柔らかいものが冬真の額に触れた。    ちゅ、と控えめな音を立てて、それはすぐに離れていってしまう。    ——え、それだけ?  ゆっくり目を開くと、秋一郎は再び冬真の胸に顔を埋めていた。髪の隙間から見える耳は、やはり真っ赤に染まっていた。 「……っ、本当は、くちに、キスしたかった、けど……緊張しすぎて、無理だった……心臓、爆発するかと思った……」  細くて震えた声で秋一郎が言った。緊張で身体を硬くして、煙が出そうなほど顔中真っ赤にして。それでも愛を伝えようとしてくれる秋一郎。そんな彼を見ていると、じわじわと愛しい気持ちが胸に広がっていく。  口にキスされる、と期待していなかったと言えば嘘になる。口にしないのかよ、と突っ込みたくはなったが、冬真は何も言わなかった。だって今、充分満たされている。  秋一郎は不器用だ。不器用だが、時間をかけてゆっくりと冬真に愛情を与え続けた。一途な秋一郎の愛情は、冬真の心の傷をゆっくりと治して、大事な人を作る勇気を与えてくれた。  別に急ぐ必要なんてない。ずっと秋一郎は冬真の答えを待っていてくれたのだから、次は冬真が待つ番だ。秋一郎は秋一郎らしく、ゆっくり愛を深めていけばいいのだ。
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