4 -番外編-

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 ふたりが昼食に選んだのは洋食屋。冬真はオムライスを、秋一郎はハンバーグを頬張りながら、この後のことについて相談した。 「冬真さん、どこか行きたいところある?」 「うーん……スカイツリーとか? あ、あと渋谷行ってみてえ。スクランブル交差点歩きたい」 「それだけでいいの? 今日あわせて4日もあるし、せっかく東京来たのに」  確かに、わざわざ3時間もかけてここまで来て何もしないのは勿体ない。が、冬真の本来の目的はもう達成されつつあるので、あとはどうでもいいというのが本音だ。 「東京観光ってか、お前に会いに来たようなもんだからな……」 「え……っ」 「だから、行きたいところとか考えてねーんだよ。お前と一緒にのんびりできたらそれで……って、おい? どうした?」 「…………ずるい」  小さい声でぽつりと溢してから、秋一郎はふいとそっぽを剥いてしまった。何故か顔だけではなく、耳まで真っ赤にしていた。人より肌の白い彼は、顔色の変化がすごくわかりやすい。 「さっきから俺にばっかり聞くけど、おまえは何かねーの?」 「えっ、俺? でも俺、こっちに住んでるからいつでも行きたいところ行けるし……」 「いや、そうじゃなくて。俺とやりたいこと、無いのか?」 「冬真さんと、やりたいこと……」 「いっぱいある……浅草行きたいし、しながわ水族館とか上野動物園とか、みなとみらいにも一緒に行きたい。あ、あと、冬真さんプロ野球好きだよね? 野球観戦も一緒に行きたい……いっぱい、デートしたい」 「おい、行きたいところありすぎだろ」 「うん。4日じゃ足りない……冬真さんと、一緒に行きたいところありすぎて困ったな」  さすがに全部は無理だな、と冬真は苦笑いした。けれども、次はいつ東京に来れるかわからないので、なるべく秋一郎の行きたいところには一緒に行ってやりたい。冬真はあまり興味ないが、きっと秋一郎と行けば全部楽しい。  この日はもう昼を過ぎていて、冬真が大きな荷物を持っていたので、渋谷に少し寄って秋一郎の家に行くことにした。  初めて行ったスクランブル交差点は、想像していたより人が多くて、まっすぐ歩くことが出来なかった。人混みの中、秋一郎と逸れそうになってしまったので、また彼に手を引かれながら歩くことになった。
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