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「ごめん、早い時間に起こしちゃって」
「あー、いや……俺が勝手に起きただけだし……ってか、早く行けよ。遅刻すんぞ」
「うん、行ってきます」
バタン、と秋一郎が出て行ってドアが閉まったのを確認して、冬真は中から鍵を閉めた。
昨夜は結局、よく眠れなかった。ヤル気満々だった上、好きな人に抱き込まれてしまったせいだ。嫌でも意識してしまう。発散できない欲望がぐるぐると腹の中を巡って落ち着かない。
——要するに、ムラムラして眠れなかったのだ。
秋一郎は行ってしまったし、することがなくて暇だ。もう一眠りするか、と再びベッドに潜る。
まだほんの少し、秋一郎が寝ていた場所に体温が残っているような気がする。毛布にくるまって枕に顔を埋めると、ふわっと秋一郎の匂いがした。香水ではなく、シャンプーや柔軟剤の混ざった柔らかい匂い。秋一郎の香りに包まれていると、落ち着いてきていた欲が、むくりと顔を出す。じわじわと腰の奥から熱いものが迫り上がってきて、冬真は艶かしい息を吐いた。
そろり、と脚の間の自身に触れると、そこは既にゆるく勃ち上がっていた。
「はぁー……マジかよ……」
思わずため息が出た。十も年が離れた恋人相手に欲情して、しまいには相手をしてもらえなくて、欲の行き場を失っている。三十路近くにもなってスマートにことに運べない自身が情けなく思えた。
「……っ、ふ、ぅ……」
下着に手を入れてみると、そこはもうじっとりと濡れていた。触れてしまったら、もう手を止めることが出来なかった。
竿を握って親指で先端をくりくりと刺激すると、とろとろとした露が溢れ出すのが分かった。汚さないように、とズボンと下着をずらす。先端から滲み出たぬめりを竿に塗るように上下に手を動かすと、ぐちゅぐちゅと卑猥な音が鳴り始めた。最後にひとりで抜いたのは、いつだったのか覚えていない。
快感を逃すために枕に顔を埋めたまま深呼吸すると、秋一郎の匂いで身体がいっぱいになった。キュン、と後ろの奥が疼いた。
秋一郎が望むならどちらでもいい、なんて思っていたが、身体は秋一郎に抱かれることを望んでいる。奥が疼くのが、その証拠だ。
「ん、……っ、はぁ……」
前だけじゃ足りない、と身体が訴えている。
空いていた方の手の中指を、自分で咥えてたっぷりと濡らし、質量を求めてヒクつく後孔にその中指を添えた。
ゆっくりと息を吐きながら、つぷり、と指を押し込んだ。
「くっ、ぁ……っ、は、あ……っ!」
片手は前を激しく扱き、もう片手の指は後ろで激しく出し入れさせる。前と後ろからの刺激に、冬真はすぐに限界を迎える。
「しゅ、う、いちろ……っ!」
どくん、と身体の奥で熱が弾け、自身の手に精を吐き出した。
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