オメガ社長は秘書に抱かれたい

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 のしかかってきた高辻は、奏の膝を抱えたまま太もものわずかな隙間にペニスを挟み、腰を動かし始めたのだった。 「なん、でぇ……っ?」  思わず落胆の声が情けなく出てしまう。高辻が腰を突き出してくるたびに、たくましいペニスと自身の腹のあいだでペニスを潰されるのは気持ちよかった。  だが、もっと欲しい場所は別のところだ。 「はっ、あっ、んっ……そこ、じゃな……っ」  突き上げられながら、奏は首を横に振る。だが高辻は短く息をつきながら、奏の太もものあいだでペニスを抜き差しするだけだった。  発情しているαとΩがセックスした場合、高確率で妊娠するといわれている。高辻が自分を妊娠させないよう気を遣ってくれているのが分かった。  だが、肌のぶつかり合う音はセックスを連想させるのに、望んでいたものとは異なる刺激が切なかった。欲しいのに、最後まで手に入らない。刺激も、この男も――。 「り、ひと……っお、ねが……っ」  奏の太ももを抱く男の腕に、手を伸ばす。はじめはこの腕に優しく抱きしめてもらいたかった。ただそれだけだったはずなのに、求めすぎたがゆえに何も手に入らなかった。 「ぼ、く……の秘書、にな……って、後、悔……して、る、か……っ?」  高辻は口を閉ざしたまま腰を振り続ける。  高辻が答えないのも想定内だ。無視されることにも、拒絶されることにも慣れすぎた。  でも、これで最後だ。最後にするから、願いを口にしても、いいだろうか。  揺さぶられながら、奏は相手を見上げる。 「……頭……あた、ま……撫で、て……」  また無視されるものだと思っていたから、高辻の手が伸びてきた時にはびっくりした。さわさわと額から頭の横を撫でられ、嬉しいのに胸がチリッと痛む。  もう十分だ、と泣きそうになったその時だった。奏の太ももを抱えていた高辻が、合わせられた太ももを開き、割って入ってきた。頭を優しい手つきで支えられながら、柔らかいものに唇を塞がれる。  一瞬、何をされているのか理解できなかった。困惑しているうちに、生暖かいものがぬるりと口内に侵入してくる。奏はそこでようやく、高辻に口付けられていることを知った。 「ん……っふ、う……ん……っ」  歯茎を舐められ、舌の根本から先までを絡めとられる。キスをするのは生まれて初めてだ。しかも相手が高辻だなんて――。ぎこちない動きでしか返せない自分に焦りつつ、奏は口いっぱいに高辻を感じた。  唇と舌を絡ませながら、高辻は互いのペニスを包み込んだ。そしてペニスの裏を擦り合わせるようにして、上下に扱きはじめた。互いの体液が泡立ち、グチュグチュと卑猥な音が耳を刺激する。  疼く場所を擦りあげられているわけじゃないのに、気持ちよくてたまらなかった。心が満たされる。同時に悲しかった。  きっと高辻も、これが奏の最後の望みだと分かっている。だから応えてくれたのだ。そう思うと、胸が締め付けられるように痛んだ。  だとしたら、覚えておこう。高辻の唇の感触に舌の熱さ、手の大きさ、肌の触り心地、そして頭を撫でた手の優しさを――。
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