オメガ社長は秘書に抱かれたい

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 たとえこの解釈が、自分の都合のいいものだったとしても、高辻が過去に起こした行動は変わらない。結局、会社と奏の為になっているのだから。  その時、社長室の電話が鳴った。ファイルをキャビネットに戻し、目尻の涙を親指で拭く。受話器を取って「はい」と返すと、電話越しに聞こえてきたのは、先ほど奏宛の電話を取った女性社員からだった。  どうやら早速、奥谷という女性から奏宛に電話があったらしい。自分に繋ぐように言うと、すぐに電話の向こうから聞き覚えのない声が耳に届いた。 『お忙しいところ突然お電話してしまってすみません』  丁寧な調子の声は、思いのほか若かった。まだ二十代前半ぐらいだろうか。 「単刀直入にお訊きしますが、どちら様でしょうか」  不躾とも思える質問を、奏は投げる。結局、高辻がまとめてくれたどのファイルにも『奥谷』の名前はなかったのだ。  すると相手は、短い沈黙のあとに答えた。 『高辻の――高辻理仁の実の妹です』
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