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Subのアイドル?
一ノ瀬 椿。
テレビやSNS、雑誌、ラジオなどどれかしらのものに触れていれば一度は聞いたことがあるであろう名前。
6歳で芸能界入りし子役としてドラマや映画、CMにも抜擢され着々と知名度を上げていった。
演技力はもちろんのこと目を引いたのはそのルックスだ。小学生にして既に出来上がっているとも言われているその顔。決して吊り目ではないが切長の大きめな瞳、すらっと通った鼻筋、薄すぎることのない唇、全てが完璧だった。
12歳になる頃にはザ・美声と言わんばかりの少年らしい透き通ったボーイソプラノの声を買われ声優のオファー、歌手としても曲を出したりしていた。
そんな彼も現在14歳。
「椿、少し話がある。」
そう話しかけてきたのはマネージャーである二見 楓。歳は…今28、だったかな。彼は俺がこの世界に入ってからずっと専属でマネージャーを務めている。言わば家族同然…なのかもしれない。
そんな彼が改まった真剣な表情で話し掛けてくるものだから何事かと少し思った。
「どうしたの、楓さん。」
「そろそろ一旦活動休止しないか。」
思わぬ提案に驚きはしたものの、納得したように俺は頷いた。
「…うん、そうだね。実は俺もそろそろかなって思ってた。自分の体の事は自分が1番わかる。最近少し声が出しづらいんだ。それに、受験生になるしね。」
ほんの少しこの世界での仕事が楽しいかもと思い始めていた頃だったのになと複雑な感情で小さく微笑むと、楓さんは何も言わずにくしゃっと頭を撫でてくれた。
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