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「う」と声が出る。
「か、かわゆい……」
大福はオレンジ色に着色され、カボチャを模した切れ込みがあり、そこから粒あんが見えていた。オレンジ色の大福生地に黒い粒あんが大福に絶妙な表情をつけている。北海道民は粒あんが大好きだ。こしあんでは商品として成り立たないからだろう。
ひとつではない。
小ぶりな四個セット。
笑ったり泣いたり怒ったり驚いた、そんな表情をしたハロウィン大福だった。しかも頬に当たる部分がほんのり赤く染まっている。
「──あたし?」
ぽろりと涙がこぼれる。
これ、あたし?
ぜんぶ、あたし?
──おじいちゃんに『ハロウィン商品を作ろう』と提案したのは中学のとき。ネットやテレビでハロウィンハロウィンと騒いでいるので『ウチも是非とも便乗すべきだ』と主張した。
そのとき返された言葉がさっきのアレだ。
高齢化の進んだこの地区でイモやカボチャを喜ぶ客がどこにいるってんだ、というものだ。
それでも子どもがゼロではない。中学だけでなく高校もある。
「学生はイベントに弱い。絶対売れるよ」
と祥子は言い張り、
「はんかくさい(アホくさい)」
とおじいちゃんはそっぽを向いた。
それでも祥子はあきらめず、ねえねえねえ、とねだり続けた。
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