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祥子がずば抜けたおじいちゃん子だった理由、それは三歳のとき両親とおばあちゃんが交通事故で他界したからだ。大福の配達途中、雪道でスリップした大型トラックに正面から激突された。
それからおじいちゃんは愚痴ひとつ言わず祥子を育ててくれた。
中学、高校だけでなく、地区で一番の秀才となってしまった祥子を東大にまで入れてくれた。東京へ行ってからも毎日のようにおじいちゃんに電話を入れた。
けれど、おじいちゃんの言うとおりだ。
寿命というのは、どうしてもあるらしい。
朝まで元気だったおじいちゃんが、昼すぎに店先で倒れていた。そのときにはもう、息がなかったという。
ううん……違う。
涙があふれてとまらない。
「……具合が悪いの、わたしに隠してたんだ。だから、こういうことがあるって思って手紙を書いたんだ」
まったくもう。意地っ張りにもほどがある。病気を隠すのも、ハロウィンの大福を納得がいくまで十年も隠れて毎年作っていたことも。
……それに気づかないわたし。嶋太郎を笑えない。どれだけ鈍感なのか。
怒った顔の大福を手に取り、かぶりつく。
目を見張る。
「う……わ。え? 何コレ。粒あんじゃない。カボチャあん? それにホイップクリーム?」
驚いた顔の大福も口へ入れた。
「え、ええ? こっちはカスタードクリームが入ってる。……まさか、全部違う味?」
箱の裏を見る。
デカデカと文字が印字されていた。
──地産地消。
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