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もち米は黒松内産の『はくちょう米』、カボチャは真狩村産『くりゆたか』、乳製品は倉島乳業の製品、砂糖はもちろんサトウダイコン、共和町産『ビート』だ。
そりゃ、と思わず祥子は笑顔になる。
「十年かかるわ。味にうるさい嶋太郎が褒めるわけだわ」
最後に残った笑顔の大福を手のひらに乗せる。
これが、最後。
おじいちゃんからの──最後の贈り物。
そっと頬張る。祥子が大好きなクリームチーズと粒あんがたっぷり入っていた。
鼻先が熱くなる。目の前がぼやけて見えなくなる。おじいちゃんの満面の笑顔が浮かんだ。両手を腰に当てて、どうだこのやろう、といっているみたいで。
「……おいしい」
ああ? 聞こえなねえな。
だから、と祥子は顔を上げる。
「おいしいよっ」
おじいちゃんが笑う。
嬉しそうに笑う。
ありがとう、おじいちゃん。
大好き。
(了)
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