誓約

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 ヒースの部屋のあるエリアの複数の部屋、廊下、そのあたりがまるごと魔法で封鎖されてる。通路には二人ずつ兵士が配置されているし、ジェイソンの言う大聖堂にしか通じてないみたいだ。もっと意識を外に向けると、ここ以外のエリアも封鎖されていることが分かる。遠すぎて不鮮明だけど、エリオットやケネスのいる居住エリアかな。  大聖堂の北側に魔法の集中している場所があって、おそらくここが宮廷魔道士のいる場所だ。封鎖している魔法はかなり大きな魔法じゃないと破壊できないな。時間も、体力や魔力も削られるだろうな。魔力を削られた後で宮廷魔道士と対決したらほとんどの人間なら負ける。  でも、俺なら突破できるし、今度宮廷魔道士と戦う時は簡単には負けない。突破してヒースを安全な場所に送り、竜になってヒースの城へ先まわり、配置されてる兵士たちを倒す。これなら魔法の誓約書に署名なんてしなくてすむ……そんなに簡単にはいかないかな。そのあとどうしたらいいか分からないし。でも、いつでもそうできるように体力と魔力は温存しておこう。 「カル?」  目をあけたらそばにヒースが立っていた。お風呂上がりのラフなシャツ一枚から覗く肌は普段よりほてっていて、白銀の髪はまだ少し濡れてる。遠くに意識を向けていたから、お風呂から上がっていたことに気づかなかった。見上げたヒースは息を止めるほど美しくて、しばらく何も言えなくなる。 「眠ってるのかと思った。まだ病み上がりだもんな。風呂はやめとくか?」 「ええと……」 「どうした? 竜は本当は風呂が嫌いなのか?」 「いや……入ってくる!」  焦った。お風呂上がりのヒースは色気があってドキドキする。今更なんでドキドキしてるんだろう。キスだってしたのに。いや、キスとかしたからますますドキドキするようになったのかな。一度竜に戻って落ち着こう。
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