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ようやく自分の番が来た。
カウンターに座る白ずくめのおじさんが、アンケート用紙を回収する。俺のアンケート用紙を見て呟いた。
「異世界転生でチート能力ね。はいはい」
それからアンケート用紙にポンと『採用』という文字のスタンプを押す。
「え? 採用って何? 何のアンケートだよ。それにここどこ?」
白ずくめのおじさんはにかっと笑った。
「ここはあの世だよ。君は転生するまでの順番待ちをしてたんだよ。前世での行いが良かったから、来世では希望に即した人生が送れるはずだよ。良かったね」
え? あの世? 順番待ち?
「あっちの列の人たちはアンケートなんて無いし、向こうの列の人たちのアンケートは魚か鳥かの二択だったりするんだよね。他にも虫とか。人間になりたくないって人たちも一定数はいるんだけれども」
えっ、そんなシビアなの? なにそれ怖い。
呆然としている間に、さっきの係の人が再びすいっとやって来た。
「はい、後がつかえてますのでこちらにどうぞ。違う世界に転生ってワクワクしますね。どんなチートがもらえるんでしょうね」
接客トークみたいな滑らかなおしゃべりを聞かされながら、背中を押されて白いゲートの前に立たされた。
「え? もう? いきなり?」
あんなに長い行列に待たされてうんざりしてたのに、いざ旅立てと言われると、中でダラダラしていたときが懐かしくなってくる。
「いってらっしゃい~」
抵抗する暇もなく、まるで掃除機に吸い込まれるほこりみたいに、身体がゲートに吸い込まれた。
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