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「エリオット様の城のあるエルモラにも複数の兵士が配置されているとの情報です。おそらく事前に準備されていたのでしょう。国王の崩御と同時に、いつでも制圧できるように。
誓約書の期限はケネス王太子が王位を継承する九日後まで。それまでに返事が欲しいとのことです」
「俺が誓約書に署名しないと、城を攻め落とすということか」
「……そのようですね。それから国王の崩御は毒殺だとの噂があります」
「エリオットもそう言っていたな」
「この城の身分のある人間は、ほぼ毒に犯されていると言う者も」
「お前はどう思う? ジェイソン」
「対抗するにはエリオット様と手を組むのがはやいとは思いますが、お二方の今の兵力ではケネス様の持つ兵力、魔力、財力に劣ります。一度誓約書に署名するのも一つの方法です」
「駄目だよ!」
誓約書には魔法がかかってる。一度署名したら命令に逆らえなくなる。
「もちろん一生ではありません。今の危機を回避したら、誓約書を取り返して消滅させるのです。誓約書のない表向きの忠誠などケネス王太子は信用しないでしょうが、逆に誓約書に署名さえしていれば無駄に血が流れることは避けられます。ヒース王子は国民の人気が高いので、利用価値があるうちは殺されたりはしないでしょう」
「そうだな、城に攻め込まれたり……皆が傷つくのを止められるなら、それもいいかもしれない」
「ヒース! そんなの駄目だ。俺が守るからやめて」
「カル、もう他の誰かが傷つくのを見るのは嫌なんだ」
「ヒース……」
俺の肩にジェイソンがポンと手を置いた。
「誓約書に署名して、ヒース王子を城に安全に帰し、城の守りを固めた後で誓約書を偽物と変更する。場合によってはヒース様を国外に逃亡させる。俺とお前でヒース様をお守りするんだ。わかるな」
俺はジェイソンの手の上に自分の手を重ねた。
「分かったよ。ジェイソン、男同士の約束だったよな」
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