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「シエラは優しいんだね」
シエラは、ヒースはもちろん、エリオットとも仲良しだった。兄弟の仲が悪くてきっと悲しんでるんだろうな。俺も少し悩んでる。ヒースのために、ヒースに危害を加えるケネスを倒してしまおうかと思ったけど、ケネスはヒースのお兄さんだから、傷つけてしまったらきっとヒースは悲しむだろうな。ヒースがどうしたいのかよく分からない。
「この国は魔物の森に囲まれているし、隣国や少数部族とも長い争いの歴史があるの。だから兄弟で協力して国を治めた方がいいと思うのだけれど、エリオット兄様にそう伝えても、お前は女だから分からないですって。たしかに分からないわ。男がどうしてあんなに好戦的なのか」
「俺はシエラが女王になったらいいと思う。ケネスとエリオットとヒースには国境のお城を守らせたらいいよ。どう?」
いい提案だと思ったけど、シエラは目を丸くした。
「やあね、私には無理よ。そのうち隣国の王子のところへ嫁ぐしかないわ」
「そうなの? 好きな人とは結婚しないの?」
俺が聞くと、シエラは少し悲しい顔をした。
「私が隣の国に嫁いでも、また会いに来てね、カル」
「うん」
シエラが恋愛小説をたくさん読んでいたのは、自由に恋愛ができないからなのかな。
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